鏡の前では、ちょっと優しくするニャ
街中ロコちゃん現れる
暑い日の夕方
部活動を終えた学生二人が、ドラッグストアの化粧品売り場に立ち寄った。
外はまだ明るく、店の窓から差し込む西日が、棚の端をオレンジ色に照らしている。
ロコは小さな丸い鏡の上に座り、足をぶらぶらさせながら二人を見ていた。
一人の学生が、鏡に顔を近づける
汗で前髪が額に張りついていた。
「やだ、今日ひどいかも」
指で前髪を直してみる
でも、直したそばからまた少し崩れる。
学生の顔が、だんだん困ったようになっていく。
隣にいた友達は、その顔を見ても笑わなかった。
代わりに、自分の前髪をぐしゃっと持ち上げた。
「見て。私も同じ」
額には汗がにじみ、髪もきれいには整っていなかった。
「夏はみんなこんな感じだよ」
二人は鏡の中で顔を見合わせた
それから、どちらからともなく笑い出した。
さっきまで気にしていたことが、少しだけ小さくなったようだった。
ロコはその様子を見ながら、自分の頬を指で触ってみた。
鏡に近づく
右の頬に、白い粉がついている。
さっき食べたお菓子の粉ニャ
ロコは慌ててこすった。
でも、うまく取れない。
今度は反対の頬にも広がった。
二人の学生は試供品を見比べながら話している。
「こっちのほうがさっぱりしそう」
「でも、今日はもう冷たいもの飲みたい」
「それな」
結局、二人は何も買わず、笑いながら飲み物売り場へ向かった。
ロコは鏡の上から、その後ろ姿を見送った。
気にしすぎなくていいと言われるより、
自分も同じだと見せてもらうほうが安心することもあるニャ
人間は、気にしていることを笑わない友達がいると、少しだけ鏡の前でやさしくなれるのかもしれないニャ
完璧じゃなくてもいい。
汗をかいても、髪が崩れても、お菓子の粉がついていてもいい。
笑ってくれる人ではなく、一緒に笑える人が近くにいればいいニャ
ロコはもう一度、鏡をのぞき込んだ。
頬の粉は、まだ少し残っていた。
まあ、これはこれで夏らしいことにするニャ

