主役より赤い脇役・・・
ジト目少女と猫ギター
ギターを三十分ほど練習したころ、お腹が鳴った。
「休憩しよう」
🎸私はカレーをテーブルへ運ぶ。
今日はちょっと奮発して、大好きなカレーだ。
福神漬も添えて……
「……あれ?」
皿の横に置いたはずの福神漬が、なぜか山になっている。
しかも、さっきより明らかに大きい。
🎸「こんなに盛ったっけ?」
そのとき、部屋の隅から鈴の音が聞こえた。
振り向くと、猫たちが七福神みたいな格好でゆっくり歩いてくる。
🐱「福を運ぶニャ」
🐱「今日は福神漬の日ニャ」
🐱「盛れば盛るほど縁起がいいニャ」
🎸「いや、もう十分だよ」
猫たちは聞いていない。
一匹が木べらを持ち上げる。
🐱「追加ニャ」
ザサッ。
福神漬がもう一杯。
🎸「増えた!」
別の猫も続く。
🐱「もっと福ニャ」
ザサッ。
🎸「待って待って!」
気付けばカレーがほとんど見えない。
赤い山だけが堂々とそびえている。
🎸「これ、主役が逆転してるよ」
黒猫が得意そうにうなずいた。
🐱「今日は福神漬が主役ニャ」
🎸「じゃあカレーは?」
🐱「添え物ニャ」
🎸「そんなカレー見たことない」
私はスプーンを持って赤い山を少し崩そうとした。
すると七福神猫たちが一斉に立ちはだかる。
🐱「慎重にニャ!」
🐱「福が崩れるニャ!」
🐱「縁起が逃げるニャ!」
🎸「ただ食べたいだけなんだけど」
そのとき茶トラが前へ出た。
🐱「儀式を始めるニャ」
🎸「儀式?」
猫たちは福神漬の山の周りを、ぐるぐる歩き始めた。
一周。
二周。
三周。
最後に全員で前足を上げる。
🐱🐱🐱「福ニャーー!」
部屋中に拍手……ではなく肉球の音が響いた。
私は思わず笑ってしまう。
「そこまでやる?」
🐱「これで完成ニャ」
🎸「何が完成したの?」
🐱「世界一縁起のいい福神漬ニャ✨」
ようやく食べてもいいらしい。
私は慎重に一口すくう。
……ほぼ福神漬だった。
🎸「赤い」
もう一口。
やっぱり赤い。
三口目で、ようやく少しだけカレーにたどり着いた。
🎸「遠いなぁ……」
黒猫が満足そうにうなずく。
🐱「ちゃんと主役へたどり着くまで楽しめるニャ」
🎸「宝探しじゃないんだから」
食べ終わるころには、お皿の上で最後まで存在感を放っていたのは、やっぱり福神漬だった。
私はギターを抱え直しながら、小さくつぶやく。
🎸「……今日、一番目立ってたのは君だったね」
すると猫たちは胸を張って声をそろえた。
🐱🐱🐱「脇役こそ、目立ってこそニャ!」

