音まで薄味になった・・・
ジト目少女と猫ギター
新しい曲が、ようやく形になった
派手さはないけれど、夏の夕方みたいに静かで、私はけっこう気に入っている
🎸「ちょっと聴いてみて」
部屋にいた猫たちへ声をかけ、私はギターを鳴らした
ポロロン♪
白く透き通った音符が、弦からふわりと浮かぶ
きれいだと思ったのも束の間、猫たちは一斉に立ち上がった
🐱「味見するニャ」
😑「音を?」
白衣と帽子を身につけた猫たちが、いつの間にか私を取り囲んでいる
一匹は計量スプーンを構え、もう一匹は真剣な顔で音符の香りを嗅いだ
🐱「まず香りは控えめニャ」
🐱「透明感はあるニャ」
🐱「でも、少し薄いニャ」
😑「曲なんだけど」
キジトラが空中の音符をスプーンですくい、慎重に口へ運ぶ
🐱「うむ……余韻が足りないニャ」
😑「食べられるんだ、それ」
黒猫は小さな黒板へ、何やら評価を書き始めた
『コク 星二つ』
『やさしさ 星五つ』
『ごはんとの相性 不明』
😑「最後の項目いる?」
🐱「音楽も献立の一部ニャ」
😑「初めて聞いたよ」
三毛猫が小瓶を抱えて近づいてくる
🐱「これを一滴ニャ」
😑「ギターに入れないで」
🐱「では、演奏へ直接足すニャ」
😑「どうやって?」
三毛猫は目を閉じ、前足を音符へかざした
🐱「気持ちでニャ✨」
何も変わらないと思った瞬間、白い音符がくるりと回り、少しだけ柔らかく輝いた
猫たちは一斉にうなずく
🐱「上品になったニャ」
🐱「角が取れたニャ」
🐱「おかわりニャ」
😑「演奏におかわりってあるの?」
私は仕方なく、もう一度最初から弾いた
ポロロン、ポロン♪
猫たちは音符を追いかけ、スプーンや小皿で次々と受け止める
ところが途中で、黒猫が険しい顔をした
🐱「待つニャ」
😑「今度は何?」
🐱「薄味すぎて、眠くなってきたニャ……」
そう言った直後、黒猫はその場で丸くなった
ほかの猫たちも次々と目を閉じる
🐱「やさしい味ニャ……」
🐱「お昼寝に合うニャ……」
😑「結局、寝るんだ」
演奏を終えたころには、料理研究家たちは全員床で熟睡していた
評価表には最後に、こう書き足されている
『眠気 星七つ』
私は白い音符が消えていくのを見ながら、ギターを置いた
😑「これは料理ではないんだけどな……」
すると眠っていた三毛猫が、片目だけ開けた
🐱「次は、もう少し濃いめで頼むニャ」
どうやら私の新曲は、猫たちの中では完全にスープ扱いらしい

