全校放送で黒歴史が流された日、私のあだながパワーアップした
「ウーパールーパー」
いいあだ名だと思う
かわいい
ゆるい
水分がある
ちょっと滑っていても、それすら潤いに見える
しかもウーパールーパーは強い
多少しっぽを失っても、また生えてくるくらいの野性味がある
かわいさと生命力の両立
ずるい
すなおに羨ましい
そんな私の高校時代のあだ名は、
大仏
だった
・・・・ゴーン
もう水分がない
潤いもない
再生能力もなさそう
あるのは、静けさと謎の重圧感だけである
当時の私は、あまり人と話さなかった
もの静か
と言えば聞こえはいい
ネクラ
と言えば、たぶんかなり正確
教室の真ん中にいるのに、どこか遠い場所に座っているような人間だった
何を考えているのか分からない
なぜか動かない
なぜか圧がある
その結果、私は大仏になった
では、その大仏が静かに何をしていたのか
悟りを開いていたわけではない
携帯カセットテープレコーダーで、ひたすら音楽を聴いていた
当時、私が夢中になっていたラジオ番組がある
NHK-FM 中村貴子のミュージックスクエア
おそらく、その後の私の人生を大きく変えた番組だ
1990年代後半
まだインターネットは今ほど普及していなかった
携帯電話はバカでかく、持っているだけで未来人みたいに見えた
音楽との出会いは、検索ではなく、ラジオと雑誌と友だちの貸し借りだった
学生たちは、ラジカセでラジオを録音する
そして、
ダブルラジカセで好きな曲だけを別のテープにダビングする
そうやって、自分だけのオリジナルMixを作る
今ならプレイリストを数秒で作れる
でも当時は違った
録音ボタンを押す
曲が終わる前に身構える
DJの声が入らないように祈る
途中で母親が「ごはんよ」と叫ばないように祈る
すべてが手作業
すべてが祈祷
ミュージックスクエアでは、ランキング30位付近の、これから売れそうなバンドや、アングラな香りのする音楽が次々に紹介された
それまでチャゲアスくらいしか聴いていなかった私の耳に、突然別世界が流れ込んできた
スーパーカー
グレイト3
トライセラトップス
ゆらゆら帝国
カーネーション
プレイグス
コレクターズ
エルマロ
ムーンライダーズ
もののけサミット
エレカシ
サニーデイ・サービス
どれも、あの番組がなければ出会えなかった宝物だった
そういうわけで、当時の私は、イヤホンをつけて教室の真ん中に静かに座る、音楽を聴く大仏だった
しかし、大仏にはもうひとつ、人には言わない趣味があった
DTMである
今みたいにパソコンでサクサク作るものではない
CASIOのキーボードをテレビにつなぎ、打ち込み画面を見ながら作曲できる、夢のマシーンがあった
私はお小遣いを注ぎ込み、それを手に入れた
そして曲作りをしながら、ひとりでミュージシャン気分を味わっていた
今思えば、私は当時から曲ではなく、妄想を作っていたのかもしれない
さらに私は、日常の中で曲のフレーズを思いつくと、聴いていたテープにそのまま鼻歌を録音していた
ラジオで憧れのアーティストが、そんなふうなことを言っていたのだ
「思いついたらすぐ録る」
かっこいい
私もやる
そうして大仏は、こっそり自分のテープに鼻歌や謎フレーズを吹き込むようになった
そして、事件は起きた
ある日
いつものように音楽を聴く大仏の前に、ひとりの放送部員が現れた
「わるい! わかモン、そのテープちょっと貸して!」
どうやら、昼の校内放送で流す予定だったテープを忘れたらしい
彼は、ちょうど交換しようとしていた私の手からカセットテープをひったくると、放送室へ駆け出した
私は反射的に叫んだ
「待て! そのテープ、絶対にB面だけはかけるなよ!」
彼は振り返り、爽やかにサムズアップした
「まかせろ!」
私は、その時の彼の親指を一生忘れないと思う
まかせてはいけない人間の親指だった
しばらくして、私はまたイヤホンをつけ、何事もなかったように音楽を聴き始めた
しかし、妙だった
視線を感じる
ひとつではない
複数だ
いや、クラス全体が、なんとなくこちらを見ている
なぜ大仏を見る
いつもは背景として処理しているではないか
なぜ、今日に限って存在を認識する
まさか
私はイヤホンを外した
その瞬間、耳に飛び込んできた
「よーよー、チェキラッチョ」
終わった
東京No.1ソウルセットや、かせきさいだぁに憧れて、ラップっぽいことをしてみた
けれど・・・
言いたいことは何もない
リズムもない
主張もない
気合だけが空回りしている
ただ声を出してみた、無様なラップ
それが、全校中の校内放送で流れていた
世界が止まった
いや、止まってほしかった
でも現実は止まらない
私の黒歴史ラップは、スピーカーを通じて校舎中を巡回していた
その日以来、私が廊下を歩くと、人が少しだけ引いた
モーゼのようだった
ただし、海が割れたのではない
人間関係が割れたのである
誰もバカにしなかった
誰も大声で笑わなかった
誰も真正面からいじってこなかった
それが一番つらい
いっそ笑ってくれたほうがよかった
でも彼らは、触れてはいけないものを見る目で私を見た
「こいつは、校内放送で自作ラップを流すタイプの大仏だ」
そういう沈黙の理解が広がっていた
そして、私のあだ名は進化した
大仏から、
大仏DJ
ありがたくない進化である
今でも思う
ウーパールーパーはいい
かわいい
愛される
再生する
大仏DJは、ちょっと扱いに困る
けれど、黒歴史というのは不思議なものだ
当時は消えてほしかった記憶なのに、今ではこうして記事のネタになっている
あの頃の自分は、たしかに痛かった
でも、何かを作りたかった
誰かみたいになりたかった
自分の中にある音を、外へ出してみたかった
その気持ちだけは、今も少しだけ分かる
たぶん創作は、だいたい黒歴史の手前から始まる
かっこつける
真似する
失敗する
恥をかく
でも、また何か作る
そうやって人は、自分だけのMixテープを増やしていくのかもしれない
あなたにもあるだろうか
謎のあだ名
封印したいテープ
思い出すと変な声が出る黒歴史
あるなら、そっと記事にしてほしい
大丈夫
大仏DJも、まだなんとか生きている
そして、あの日の黒歴史の糧になってる
つまり・・・








エンディングはもはや悟り開いた感じがもう…
わかモンさん、凄い、凄すぎます👍
あ、👍はダメでしたか💦
親の声が入らない様にってのももうツボ過ぎて…
腹痛い…
わかモンさん、
↓これご存知?もしくはお好きですか?
時計の針は8:30をさーす♫
突然表れたSDP &ヨージよーし♫
どうも有難うございますm(_ _)m ✨
大仏DJ🤣
カセットへラジオの録音を手を震わせながらやっていたのを思い出しましたね🤣
あのラジオ番組の時間で完成したテープは、もう、芸術位に思ってましたが、自作したテープを校内放送で🤣
めちゃくちゃ楽しかったです😁